新規事業の支援をさせていただく中で、マーケティングがうまく進められないという話を聞きます。
私はあるクライアントの新規事業の製品の工程設計・装置開発に関する技術アドバイザーとして事業開発に参加しました。私が似た事業の製品企画、マーケティング、製品開発・要素技術開発・量産技術開発まで一貫して開発部門の指揮したことがりました。マーケティングも直接担当しましたので難しさは理解していました。
そのクライアントも、実績のないため顧客を訪問しても一般的な話し程度しかしていただけず、欲しい情報が得られないという状況でした。
それでも何回か会う中で少しずつ情報が得られるようにはなっていったようです。そのような対応をしていただける企業は比較的小規模な会社で、サンプルを提供してもなかなか評価をしていただけない状況が数年続いていました。
クライアントは材料系の企業で、特殊な材料を持っておりそれを使って製品を企画していました。確かに特徴のある材料ですが、一般的な物性や特性だけではユーザに関心をもっていただけませんでした。(ユーザの心に響かなかった)
私は、この状況では販売先ができないのではないかと思い、マーケティングに関しても提案を行う事にしました。幸い別の案件でお世話になっていましたので、私も意見が言いやすかったからです。
エンドユーザがどのような特性を要求しているかはわかっており、改善の要求もある程度は予測ができましたので、材料の違いによる特性の違いを示すことを私は提案しました。
クライアントは材料は作れましたが、エンドユーザが使う製品までは加工ができませんでした。しかし実際に自社の材料が良いのかを示せないと顧客に納得していただけないだけでなく、自分たちも自信をもって販売することができないと考えて、評価できるサンプルを作成することにしなりました。
私からは、加工装置の提案を行い、クライアントは手作りで装置を作って、評価サンプルを作りました。幸い評価装置は数年前に購入していただいていましたので、何とか評価ができました。
自社の材料の特徴が出せる特性、用途は何かと調査をする中で、その材料の特徴が出せる評価項目をクライアントが発見しました。そのデータをターゲットとなる顧客に提示したところ、大変驚かれ、関心を持っていただけました。その結果、今までできなかったお話ができるようになりました。クライアントが提供したデータは、この業界ではほとんど開示されない情報だったようです。
新規分野への参入や、新規用途の開拓をする場合には、顧客の真のニーズを得るためのマーケティング活動は非常に重要です。しかしがなかなかうまく進められないのが常だと思います。(私も苦い経験しました)
しかし、顧客も、エンドユーザも競争をしており、より良い製品や技術の情報は欲しいはずです。また製造をしている以上課題は沢山あるはずです、それらの課題の解決に有効な情報に飢えていると私は思っています。
その情報は何かは、必ずしも顧客やエンドユーザはわかっていないので、サプライヤーと双方が歩み寄る必要があると私は思います。
私のクライアントは、材料メーカで、材料のことは詳しいのですが、エンドユーザの使い方や困りごとはよくわかっていませんでした。そこで、一歩踏み込んで、実施に使う場合に何が問題になるか自身で経験したことで、双方の距離が縮まり、共通の言葉で話ができたのだと思います。
私は、このような活動を評価技術の開発と捉えています。メーカにとっての最大のノウハウの一つだと考えて開発を行ってきました。今回、この評価技術をマーケティング活動と組合わせて活用することで、顧客との信頼関係の構築と競合他社が持っていない情報収集として役立ったようです。
評価技術は、クレームが出た場合の対応(自社製品が原因で起きた不良化の判定)、製品や工程改善の妥当性の評価として活用してきました。
私にとっても、マーケティングに活用できることはわかり大変良い経験でした。