第5回 全社活動による収益の継続的改善と会社の風土改善について

だいぶ時間が空いてしまいました。

コラムの第5回は、継続的な収益改善と社会風土に関して記載します。

このころラムを記載しようと考えたきっかけは、2010年に私を含めて社長と経理担当役員の3名が子会社に赴任し再建を行いました。もちろん、子会社の方々が再建を強く望んだことが再建の原動力であることに間違いはありません。

私がたもとの会社に戻った後も収益の改善が進み、2022年にカーライルに買収されましたが、その年には15%以上の営業利益を出せる企業に成長していました。再建から7年目のことです。

がその会社を去るときは、再建ご3年目で8%程度の営業利益でした。それから6年で約倍の営業利益が出せる会社に成長しており驚きました。もちろん景気の影響もあると思いますが、同業の電線業界の大手4社では平均で5%程度の営業利益ですので、15%が際立った利益率だと思われます。

再建後も改善が進んだ理由に関して私なりに考えたことをお話しします。

私は取締役兼執行役員で、研究開発部・設備部・原価低減部及び知財部の部長を兼務していました。当時の担当は、原価低減でした。再建にあたっては、事業の縮小化と残った事業の収益性の改善が最重要課題でした。私の担当は後者でした。

赴任して工場の視察を行いましたが、電線は装置産業です、装置の生産性と品質管理が最重要の管理項目だと私は思っています。当時の子会社(現在の株式会社TOTOKU)は導入したときの能力のままで、何十年も生産をしていることが分かり、大変驚きました。親会社にいたときには考えられない状況でした。

設備部に指示して、大きく生産に寄与している装置はの生産性2倍にするように指示しました。お金がなかったので、改造レベルでできることに限定しました。

線材を使ったコイル部品や線材を切断した部材や部材を加工して部品として製品も製造していました。その事業分野では改善はそれなりに行っていました。

携帯電話に使われる部品は、独自の製法を開発しており材料の加工技術が高度なレベルでした。しかし生産量の波が大きく、市場を守るために大幅な生産性の改善が必要とされていました。事業部門だけでは生産性の改革は行えない状況でした。

共通していた製造部門の課題は、改善活動を行っていましたが、経済的効果を生んでいない事でした。このことを近沙里宇会社から指摘を受け、ビジュアルマネージメント(VM)方法をを導入しました。

これは、経済効果が出る活動を計画すること、その結果を確認すること。その進捗を毎週経営幹部がフォローするという一連の活動です。この活動前にも、1回/月の原価低減活動の報告会はありましたが、活動の定性的報告で、目標とする改善金額が達成しているの、いつ目標が達成できるのかという数値的な管理は全くできていませんでした。

VMは、目標を数値化し、その達成状況を現在、そして将来にわたって予測する管理方法です。

VMを導入して、まず現場の担当者の収益に対する意識が変わってきました。私も部隊的案件の全て確認したおり、改善の担当者だけでなく、製造部門の部長・課長やスタッフそして原価低減推進部の担当者が立てた目標を達成するために真剣に検討した頂、私に報告してくれました。これで、私は製造部門の技術的課題、会社の組織的課題を把握できました。

VMは1年目に目標の原価低減2.5%を達成したことで、会社の重要な活動と認知され、国内子会社、海外子会社に2年目に展開しました。3年目には定着ができ、残った事業の収益性は大幅に改善しました(人員半分で2倍の売り上げに対応できるレベル)。その後もTOTOKUは収益性を向上してゆきました。

その理由は以下の活動が定着して、継続されており風土化していることだと思っています。

(1)VM活動は、製造部門だけでなく、製造に係る部門全員参加で行った。

 製造の設計部門、別の組織の購買部門、設備部門、原価低減部門、研究開発部門、及び知財部門(海外子会社との契約関連)

(2)事業の収益に改善活動がいくら関与しているかが見える化され、効果が把握できる。

(3)1年以上先を見たVA活動が部門間で連携する仕組みができた。(購買部門と設計部門)

(4)事業部門で行えない長期的な開発を事業部門から依頼され研究開発部門が実施。(事業が傾いたころにはこのような連携がなくなっていた、それが再開できた)

 これらが、「全員参加」、「収益にコミットした継続的改善活動」が会社の風土となっていることが、これまでのTOTOKUの強みだと思います。

 風土とは、何十年もかけて定着するものだと私は思っていましたが、そうではなく現状を変えたいという『志・意思』によって数年で育成でき、定着できることを知りました。

  カーライルに買収されてどのように変化していくのか、今後の動向を見守りたいと思っています。